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 広島市東区牛田新町にある不動院は新山安国寺と号し、創建時代は不明であるが、金堂本尊薬師如来像は藤原期のもので、遅くとも藤原時代には存在していたと考えられる。鎌倉期以来江戸時代にかけて、戦乱に散った武将や兵士たちの慰霊の寺として、あるいは藩主の祈祷や祈念をする鎮魂の場となってきた。
そして、変転の激しかった長い歴史の中で、その時代時代を駆けぬけていった権力者や武将たちのしたたかな生きさまや、盛衰のドラマを見つめてきた。国宝の金堂を始めとする文化財も数世紀に及ぶ風雪に耐えて、昔の栄華を今に留めており、原爆で一瞬にして多くの文化財を失った広島にとって、きわめて貴重な存在となっている。
藩政時代までは庶民の自由な参拝が許されなかった不動院も、明治以降は庶民の暮らしや文化の中にしっかりと根づいて、周辺地域の人たちの 「心のふるさと」となっている。